はつゆき

橋をわたろうとするたび
あなたに呼びとめられた気がして
空を見上げる
冷たくなりきれないまま空をはなれた
はつゆきが
川の流れに抱きとめられて
ゆるやかに またたいている
すれちがうためだけに出会う人がこんなにいて
何故 わたしの温度があなたを選ぶのか
わたしにはわからない

対岸からさしだされたあやとりに
やさしい人のゆびが通されて
また 橋が架けられていく
あなたもまた 別の橋をわたり
きっと空を見上げているのだろう

はつゆき。
さざなみの筆跡に
ゆるやかに消えていく
水のうえの句読点
それぞれのページにしおりをはさんで
人はまた 次の橋をわたっていく

空を見上げた またたきのなかに
はつゆきの温度を
残したままで