96193

うれしいことは
ニーゼロニーゼロ

かなしいことは
ニーニーロクシゴ
ロクヨンゴシ

ぼくの思うところによれば、
にっぽんじんは数学が、
苦手あるいは嫌いなはずだが。
そんな持論とは裏腹に、
みんな数字は、
けっこう好きだ。

まちにあふれる
ニーゼロニーゼロ

わすれさられる
イチキューヨンゴー

なんでも
キューイチイチでは
サンゼンニンが亡くなって
ロクセンニンもの負傷者が出た
サンイチイチの
死者はイチマンゴセンニン
行方不明者はニセンゴヒャクニン

すごいね
ぜんぶ
「約」だね

切り捨てられたヒトビトは、
いったいどこへいったのだろう。
なんて、
ボクが死んだら絶滅するぼくには、
わかるはずなどないのだけれど。

ねえ知ってる?
ボーカロイドってさ、
データを消去されるとき、
とても短いうたを歌うんだって。
ぼくには信じられないな。
みんな教え込まれたかのように、
ゼロとイチの羅列だなんて言うけれど。
見たことないもの。
綺麗な声で上手に歌う、
かわいい不思議な女の子だよ。
いくら早口が得意だからって、
消去されたら、
何も言えない。

たとえば科学が進歩して、
ぼくらのココロやタマシイが、
塩基に出来た微細な傷とか、
血流の起こす、
静電気だと分かっても、
ぼくらはそれを信じるだろうか?

ヒトリが亡くなるのと
ヒトリで亡くなるのは
どちらが悲しいことなのかな
ヒトリがヒトリで亡くなるのは
もっと悲しいことなのかな
やさしいきみは
百万人が死ぬよりも
あなた一人死ぬほうがつらいよ
なんて言ってくれるけど
すると百万人のぼくが死んだら
百万人のきみが
泣くわけでしょう?
洪水くらい
起きてしまうよ

あかるいみらい
ニーゼロニーゼロ

かなしいくらい
イチキューハチロク
ゼロヨンニーロク

白夜の国のよもぎの町で、
七十万の命を削る、
象の踵が流れ出すころ、
ニーゼロイチイチなど知らぬ、
東北の町で生まれたニキロ
イチキューキューグラム。

そんなナナジューオクブンノイチ。